芝生の園庭
初めに
子どもが思いっきり走り回れる安全性と、砂埃の軽減を求めて園舎新築に併せて園庭に芝生を植えてみました。 芝生の広場を裸足で思いっきり走り回られる環境が夢だったのです。
人数と面積
もう、30年以上前、先代園長が旧園舎にも芝を植えてみたことがあります。 でも、あっという間に無くなってしまいました。
以前の園庭面積は約70坪、今回新しい向洋保育園の園庭は230坪、認可保育園の園庭面積は3歳以上児数×1坪が最低基準ですので、かなりの広さです。 面積が増えたから芝もちゃんと伸びるだろうと考えましたがどうでしょう? 大人の運動量と子どもの運動量は大きく違うと感じます。 あんなに走ったり跳ねたり大人には出来ません。 面積/人数の割合がどの程度ならばうまく生育するのか疑問でした。
園庭工事
保育園新築移転で、園庭の整備も同時に行いました。 残念ながら園庭や外構工事は補助金対象外のため予算が厳しく大変でした。
水はけは良い方だという事でしたので、吸水管工事など特殊な園庭工事は行いませんでした。 ローラーで均した後黒土を約15センチほど入れました。 10トンダンプ10杯近くあったようです。
本来なら、黒土と肥料を混ぜておかなくてはならないのですが… 忘れていました(低予算のせいもありますが)。
芝苗選定
芝苗は細葉高麗としました。 この時点では勉強不足で、冬芝と夏芝がある程度の知識しかありませんでした。 でも、芝苗は専門業者に工事直前に切り取ってもらいましたので新鮮でした。 ホームセンターなどで売っている切り芝は時間が経っていることが多く、内部が蒸れて品質的に劣る場合が多いようです。
園庭という場所
園庭は、公園や庭園の立ち入り禁止の芝生エリアと違って、子ども達が飛び跳ねる場所です。
だから、芝生の綺麗さよりも砂塵防止、怪我防止としての芝を考えています。 芝に限らず何らかの草が一面に生えていれば良しと考えていますので、均一さや色合いなどは追求しないことにしました。
芝植工事 平成14年2月26日
芝張り後 2週間目の様子 3月15日頃
工期の関係で芝を張った後、養生ができません。
芝張り後2ヶ月ほどは立ち入りを禁止する と専門書には書かれていますが、とうていそんな余裕がありません。 まだフワフワしているような状態から子ども達を遊ばせなくてはならず、先が思いやられます。
まぁ 子ども達の芝であって、芝のための保育園ではないと割り切るしかありませんでした。
芝張り後 1ヶ月目の様子 4月
少しずつ緑が出てきました。
芝張り後 2ヶ月目の様子 5月
暖かくなったので、園庭で遊ぶ時には裸足で遊ぶことが多くなりました。 芝にも優しいようです。
芝張り後 3ヶ月目の様子 6月
子ども達の踏圧で水はけの悪いところが出てきました。 鉄杭で多数の穴を開けて排水を改善しました。
踏圧に強いバミューダーグラス(製品名 ジャックポット)の種を雪印種苗より購入し散布しました。
雪印種苗 芝のページ
芝張り後 4ヶ月目の様子 7月
調子の良いところはかなり伸びてきました。 根がしっかり張るまで肥料は控えた方が… と思っていたのですが、どうも色が悪く、生育も遅いと感じたので肥料を与えました。 他の植物より多めに与えるとことを後で知りました。
追肥のあと色が良くなり、生育スピードも上がったようです。
芝張り後 5ヶ月目の様子 8月
裸足で遊ぶ事が多く、芝のすり切れが少ないようです。 でも芝張り後一度も芝刈りをしていません。 伸びる量とすり切れる量のバランスがとれているのでしょう。 6月に蒔いたバミューダーグラス(製品名 ジャックポット)は所々確認できますが、発芽時の一番柔らかい時期に踏みしめられたのか広がっていません。
芝張り後 6ヶ月目の様子 9月
7月、8月、9月は週2〜3回散水を行いました。 また、雨により水はけが悪い場所に水たまりが出来るので再度鉄杭で水はけ改善を行いました。 少しでも生育の悪いところはクッションが無くすり切れるようです。 これから芝の生育が遅くなれば冬になる前に芝はすり切れて全滅してしまいそう。
芝張り後 7ヶ月目の様子 10月
裸足で遊ぶこともなくなり、すり切れが広がります。 冬場のすり切れを防止するため、ウインターオーバーシーズ(夏芝に冬芝の種を蒔く)しました。
アニュアルライグラス フェアウェイ 50%
ペレニアルライグラス ビビッドグリーン 50%
ケンタッキーブルーグラス アワード 30%
トールフェスク アリッド3 70%
上記2種類の混合種 合計4種を蒔きました。
これも、発芽時の柔らかい時に踏みしめられて大ピンチ!
芝張り後 8ヶ月目の様子 11月
このままでは春まで持たないと、芝防護マットを導入しました。 面積が広いため価格的に大変でしたが、材質も柔らかく子どもにも安全と思い購入しました。
グリーンテクターのホームページ
芝張り後 10ヶ月目の様子 1月
津久見では霜も滅多に降りないのですが、芝防護マットに霜が降りると滑りやすくちょっと心配しました。 寒い日でも午前9時には霜も解けてしまうのですが…。 冬芝がマットの隙間でひっそりと息づいています。
芝張り後 11ヶ月目の様子 2月
一月と同じような状態ですね。 降雪もないので冬はメンテナンスフリーです。
芝張り後 13ヶ月目の様子 4月
4月になると急に芝の生長が早くなってきました。 園庭隅のあまり踏まれないところはかなり伸びています。
3月末にセンチピードグラス(夏芝)の種を蒔きました。 なかなか発芽が確認できません。
芝張り後 13ヶ月目の様子 4月
ミステリーサークルだぁ 肥料をあげたのですが… 元来のいい加減な性格で、肥料の与え方にムラがあって、肥料焼けを起こしてしまいました。
平成15年4月24日の園庭 もっと伸びてくれると嬉しいのですが… でも、今伸びているのは冬芝なので、梅雨時期になれば枯れてしまいそうです。 その時期に夏芝の勢いが良くなれば最高なのですが どうなることでしょう。
これまでの考察 (平成15年4月時点)
1.当初計画の重要性
芝生の園庭を考える場合、当初の計画がとても大切。 保育所の場合は、学校や幼稚園と違い長期の休みがない(夏休み・春休み等)ので芝の園庭にするには一層厳しい条件となることを覚悟する必要があり、園庭面積と児童人数・園庭の水はけや土質・気象条件・芝の種類 等々を十分検討することが重要だと感じています。
向洋保育園の場合3歳以上児が約80名 園庭面積が230坪ですが、この場合夏場はよいが秋からすり切れが広がってしまった。 防護マットが無くても芝が育成するには、園庭は3歳児以上の児童1人に対して8坪以上は最低必要ではないかと感じています。 (細葉高麗の場合) 小中学校では校庭の利用頻度が保育園よりも低く、また面積もある程度確保できそうですが、保育所等ではなかなか難しく感じられます。 踏みしめに強い種類(ティフトン等の場合)はもう少し狭い面積でも可能かもしれませんが… 芝防護マットの導入は狭い園庭でも芝生の園庭を実現してくれます。 価格的にかなりの出費となりますが導入効果はきわめて大きいと感じます。 当園が導入したグリーンテクターは柔らかい材質で児童にも安全であり、マット張りの作業も部分的段階的に導入することによって業者に委託しなくても施工することが出来た。 踏み固め対策として、土中にトランプ大の樹脂メッシュを混入しその反発力で踏み固めに対応する製品や、螺旋状のゴムを客土に混ぜる方法もありますが、保育所の場合すり切れが主な障害で、樹脂メッシュ等の効果は疑問が残る。
2.管理体制
公式サッカー場のように整備された芝生グランドは大変管理に手間がかかりますが、保育園の園庭を芝生にする場合、水やりと肥料の散布だけで良いのではないかと思う。
手間のかかる芝刈りだが、子ども達の運動によりすり切れて芝刈りを行うほど伸びることはあまりない。 また、伸びたとしてもその不均一な様子がかえって自然の草原のようで、子ども達には好ましいのではと思う。
雑草の除去についても、園庭が何かの植物で覆われていれば良しとする発想ならば取り立てて問題にならない。 特別目立つ雑草は、子ども達が勝手に引き抜いてくれる。
芝の園庭効果
1. なんといっても埃がしない。 芝の園庭でなかったら外廊下はいつも砂まみれ、部屋の中も子ども達が知らずに持ち込む砂で大変です。
子ども達は砂遊びが大好きですから。(しかも砂場以外での砂遊びが好きなのです)
2. 安全 子ども達はいつも、転んだり滑ったり。 擦り傷に砂が入って… という危険が無くなりました。 擦り傷そのものもほとんどありません。
また、0〜1歳児はすぐに砂や土を口に入れてしまいます。 芝生が生えているお陰でそのような事もなくなりました。
3. 温度 この園庭が砂と土のグランドだったら… 園庭からの照り返しで園舎全体の温度がかなり上がってしまうでしょう。
夏場のエアコン使用時間も少ないように感じます。
4. 激しい雨が降った後でも3時間ほどすれば園庭で遊ぶことが出来る。 これは、芝防護マットのもう一つの効果ですが、子ども達がしゃがみ込んでも直接土にふれないのでズボンや服が濡れません。
5. 雰囲気 見学においでた方は園庭が芝生ということをとても高く評価してくれます。 子ども達もごろごろ寝転がって遊べます。
平成15年5月6日撮影 連休の間にぐんぐん伸びました。
かなりの長さになっていますが、見た目の綺麗さよりもホワホワ感触が良いなぁって思っていますので芝刈りはもう少し様子を見ます。
色が違うところは芝の種類の差でしょう。 黄色っぽいところは高麗芝です。
高麗芝はまだ草丈があまりありませんが、冬芝はかなりの草丈になっています。 子どもの靴が半分隠れるくらいです。
(平成15年7月末時点)
アニュアルライグラス(フェアウェイ) ペレニアルライグラス(ビビッドグリーン)の2種は
梅雨前から生育が停止して枯れていきました。 ウインターオーバーシーズ用の暑さに極端に弱い
品種でした。
冬芝では暑さに強いタイプ
ケンタッキーブルーグラス(アワード) トールフェスク(アリッド3)は
まだなんとか頑張っているようです。
全体を見てみると高麗や他の夏芝も伸びてきて一面緑で園庭としては納得いくレベルです。
平成16年6月
昨年は冬芝を植えたため梅雨時期に枯れた部分が多かった
今年は3月に野芝の種子をまきました。 現在の園庭はいろんな種類の夏芝が生えていて緑いっぱいです
均一の綺麗さはありませんが、狙い通りの園庭となりました。
平成16年8月
空梅雨で水不足となりかなりの面積が赤く変色してしまいましたが、台風の運んでくれた雨によって復活!
平成16年8月末撮影
とても綺麗で納得です
平成17年8月
砂場の位置を建物の日陰にはいるように移動させた。 午前中はアンブレラ 午後は建物で陰になり
良いようだ。 ついでに砂に埋もれていた芝防護マットをはがして新たに芝を少し張った。
平成18年6月
芝防護マットが地面にめり込んできたので一度上げて芝を張り直しました。
今回はノシバにしました。
昨年砂場の回りに柵を設けて砂の持ち出しを制限したところとても良かった。
@すなばからの砂の持ち出しが減って芝が防護マットに埋まるところが少なくなった。
A砂場の砂が減らなくてよい
園庭を芝にする場合、砂場から持ち出される砂を少なくすることがとても重要だと感じています。
また、近頃は虫探しに子ども達が熱中して、隅を掘り返していろんな虫を探しています。
虫探しで土を掘られないように防護マットを隙間の無いようにかぶせる必要があります。
綺麗に張り替えられた芝防護マット 奧の黄緑部分はは昨年張り替えたところ。
一面緑になって大満足 18年7月24日撮影
平成19年5月10日撮影
今年も緑鮮やかな季節になりました。 感触、色合いも素敵ですが、芝の香りって良いですね。
平成19年5月12日 土曜夜 ボーイスカウトが園庭でキャンプしました。
夜の芝生の園庭は一層綺麗です。 ドーム型テントも芝の上で気持ちよかったです。
向洋保育園現在の園庭芝生の状態はライブカメラでご覧いただけます。
芝生スピリット
校庭に芝生を… というNPO